「厩火事(うまやかじ)」という落語がある。
ドラマ「タイガー&ドラゴン」で取り上げられてて知ったんだけど…
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時は江戸の世。ある城下町。
亭主と喧嘩をしてしまった髪結のお崎。
亭主は本当に私を愛してくれているのだろうか?
不安に思ったお崎は、悩みを打ち明けた仲人から二つの話を聞く。
昔、唐土に孔子という学者がいた。
ある日、留守中に火事が起きて、大切にしていた馬が焼け死んでしまった。
留守番をしていた家来達は申し訳なくて孔子に許しを請う。
しかし孔子は、その家来達の無事を確かめただけで、
馬のことを尋ねることはなかった。
また逆の話もある。
麹町の焼物好きのお殿様は、奥方が皿を運ぶ途中階段から落ちたのに、
皿のことばかりを心配してしまったため離婚することになった。
これを聞いたお崎。
自分の亭主はいざとなったら私を心配してくれるのだろうか?
そのことばかりが気になり、ある計画を立てた。
亭主が大切にしている瀬戸物の皿を運ぶふりををしてわざと転んで割ってしま おう。
そのとき亭主が皿ではなく私の身を案じてくれれば、
夫は本当に私を愛してくれている…。
帰って早速計画を実行するお崎。
亭主の前で大事にしていた瀬戸物の皿を割る。
亭主「おいおい。何をやっているんだい。ったく。おめぇ大丈夫か?
どっか怪我はしてないかい?」
それを聞いたお崎。うれしさで涙がこぼれる。
お崎「…グスッ……おまえさん……うれしいじゃないか。
瀬戸物よりもあたしを心配してくれて。あたし、本当にうれしいよ。」
亭主「おいおい。なにも泣くことねぇじゃねぇか。」
お崎「これが泣かずにいられるもんかね。……でもおまえさん、
そんなにあたしのからだが大事かい?」
亭主「おう!あたりめーだ!!
おめぇに寝つかれてでもみろ。
食いブチが居なくなりゃ遊んで酒を飲んでらんねぇ」
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さて。
時代は飛んで世は平成。
名もない大学卓球部の、名もない新入生歓迎会。
居酒屋での二次会も終わってほろ酔い気分のbane。
三次会を行う合宿所に到着する。
……事件は既に起こっていた。
目の前にあったのは、あまりにもベタで、だからこそ痛い光景。
……あーあ。また大変だ……。
…………つーかさぁ。
ガラスとか割るなよゴラァ!!
……そう。
合宿所のドアに付いている窓ガラスが、見事に割れていたのだ。
幹部学年の後輩達が、飛び散った破片をせっせと片付けている。
後輩の一人が、事情を説明してくれる。
どうやら最初に合宿所に到着した後輩トーマス(仮名)が、
カギを持ってなかったという理由で無理矢理窓を割って侵入しようとしたらしい。
……酔っ払っていたとはいえ、少々度が過ぎている。
部屋の中には、酔っ払って自分のしたことが分かっていないのか、
憮然とした表情のトーマス。
…………。
プチッ。
bane「おまえなぁ。どーするんだよこれ!!」
自らも酔っ払っているせいか、声を荒げるbane。
頭の中は呆れとこれからどうするかでいっぱいだった。
後輩A「とりあえず、トーマスに怪我は有りませんでした…」
冷静に状況を教えてくれている別の後輩の声など耳に届かない。
あーもうこれどうしよう。
きっと窓弁償だよなーまあそれはトーマス負担ってことでいいとして。
問題は大学にどう説明するかだよなー。
下手をすると「ガラス割るような部活に今後合宿所は貸さん」とか言われたり…。
いやいやそれより三次会どーするかが先か?
もっと上のOBさん達もいることだし、さっさと破片片付けて窓を紙とガムテ
とかで塞いで中に入れるようにしないと…。
あ、でも中に破片飛び散っていそうだからガムテとかで中も掃除した
方がいいか。
よし。なんにせよとりあえず紙とガムテは必要だな。
酔った頭で状況を整理。
bane「…とりあえず紙とガムテープを買ってくる。」
ガラスと三次会のことばかり気になったbane。
何の違和感もなしに近くのコンビニへと向かったのだった。
…………。
俺の行動、完全に麹町のお殿様じゃん!?
……孔子になれないのは仕方ないとして、
せめてお崎の亭主みたく心配しといて落とすとかなかったのか俺!?
(それもだめだろ)
マジでごめんトーマスm(__)m
オイラちょっと人道的に間違ってた。
……でも次からガラス割るのだけはやめてね。
(本音)