病名










吐き気がする。食欲がない。




私がそんな症状になってから三日間が経っていた。




最初はよくある風邪だろうと思った。



こんなものは一日休みをとってしっかり寝ていれば翌日には元気になる……

そう思って一日安静にしていたが、どうにも回復しない。

それどころか、下痢の症状まで出てきた。

具合は悪くなる一方である。





……これ、なんか悪い病気なんじゃないだろうか……。


そう思い始めるまで時間はかからなかった。





そもそも「食欲がない」という状態が不安だった。


こう見えても私は常に何か食べていないと「死んじゃう」人間なのだ。


太らない体質をいいことに、いつ何時でも食べている……。

そんな生活を幸せと感じていた。




それが。

ここ三日間で食べたものと言えば、おにぎり二つとヨーグルトが三つ。

食べたくても物が喉を通らないのだ。


異常である。

ひょっとしてこれは死に至る病気かもしれない。





不安は増す一方。

そこで。


毎度おなじみ学務係に今回は内科を紹介してもらった。


……眼科のときみたいなドクターじゃあありませんように。









診察室に入ると、優しそうな中年のドクターが座っていた。

ドクター「今日はどうされましたか?」

顔色の悪い私にドクターは笑顔で対応してくる。

……どうやら、眼科のときみたいな心配はしなくて良さそうである。


私はここ三日間の症状を細かく説明した。

bane「なんか悪い病気じゃないかって 心配なんです。」

不安を隠さず訴える私。

ドクター「なるほどわかりました。とりあえず診察しますね。」




ドクターは診察を始めた。

喉の奥を覗いた後、聴診器を胸と背中にあてる。

続いてベッドに寝かし、触診をする。

私を椅子に戻して、カルテになにやら書き込む。



ドクター「なるほど。なるほど。」

「なるほど」が口癖なのか、カルテに書き込みながら一人でうなずくドクター。


私は不安に耐えられなくなり、口を開いた。

bane「どうなんですか?」

蒼白な顔の私。


ドクター「いやいや。そんなに気にするほどの事でもないですよ。」

ドクターは最初と変わらない笑顔で「それ」を答えた。










ドクター「ただの食べすぎですから。」








bane「…………。」


ドクター「…………。」



bane「…………ええ!?」

なんですかそのひたすら情けない病名は?


動揺する私にドクターは変わず笑顔で解説する。

ドクター「あなた、よく食べる方だっておっしゃって ましたね?

日頃の暴食が少しずつ胃に負担をかけ、それが許容量を超えてしまって

一時的に胃が正常に動かなくなった、という感じです。」



…………。


呆然とする私にドクターはさらに続ける。


ドクター「胃液の分泌を調整するため点滴を打ちましょう。

下痢止めのお薬も処方しておきます。

…………安静にしていれば明日にも治りますよ。」



情けない……。情けなさ過ぎる……。

大騒ぎして病院に駆け込んで「食べ過ぎ」って診断されるなんて……。




…………いやいや。

単なる食べ過ぎでこんなに体調が悪くなるハズがない。

これはきっとやっぱりなんか悪い重病かなんかで……

未だに不安顔の私にドクターは、

ドクター「どうしても不安ならばウチの医院にはレントゲンやバリウム検診など の設備もありますよ?

……ただこれには時間やお金もかかりますし、あまりお薦めはできません。

今回の治療で様子を見てはどうでしょうか?」


…………。


bane「……いえ。点滴とお薬お願いします。」










結局。


点滴打って帰って下痢止め飲んで寝て。

翌日の夕方には回復してました。












後日。









学校の友達「病気で休んだって聞いたけど大丈夫?どんな病気だったの?」

教授「ゼミを休んでましたけど体調は良くなりましたか?

お医者さんにはなんて言われたんですか?」







これ絶対に言いたくねぇ!!


結局正直に話したら爆笑されました。