地獄の海峡ウォーク










そもそも私は長距離タイプではないのだ。


スポーツは好きだし、得意なつもりだが、体力がない。

短期決戦タイプ。短距離走ならそこそこ速いが、マラソンは人並み以下。

だいたい「走らないスポーツ」という理由で卓球部を選んだのだ。



なのに。それなのに。



新人教育担当「4月15日日曜日は新人研修として

『海峡ウォーク』というイベントに参加してもらいます。

毎年約2万人の市民が参加するイベントで、 30km歩いてもらいますから、

がんばって完歩してくださいね。」




………………。




ええーーーーーー!!







と、いうことで参加してきました。

山口県下関市市民イベント。




"春らんまんの歴史海道を歩け歩け"

「第22回維新・海峡ウォーク」




もう最悪。

30kmも歩けるわけないし。

こんなの新人研修カリキュラムに入れないで欲しいよマジで。




当日朝8時。

バスでスタート地点となる東行庵の小学校に到着。

ここまで来るのにすでに疲れているのは気のせいだろう。


開会式の最中に、新人教育担当の人(この人も日曜に大変だ) から社名の入った旗が渡される。

私の勤める会社はこのイベントのスポンサーになっているらしく、 新人の参加も営業活動のうち。

新人で数本の旗を交代で持ち、地域にアピールするというのだ。

……まあただ参加するというよりは、「営業の一環」という名分があればやる気も出てくる。

ここは一つ、がんばってみますか。(←働きざかり)



しっかしとにかく人が多い。

小学校の校庭に整列しているのだが、人で埋め尽くされまくっている。

さすが参加者2万人。

夏の1万人プールを思い出すねぇ。(宇都宮ネタ)





8時45分スタート。

なんか近所の小中学校のブラスバンドが盛り上げてるし。

校庭を出るときパンフレットにスタンプを押してもらう。

コースには数箇所関所が設けられており、そこで通過スタンプをもらい、 休憩などもできるというシステムらしい。





とりあえず宣伝の旗を持ち、同期達とバカ話しながら歩く。

ここ東行庵はかの高杉晋作ゆかりの地らしく、記念碑などが色々見受けられる。

木屋川沿いの田舎道。

さすがに体力的にはまだ余裕。

持ってる旗が結構長い(よくパチンコ屋の駐車場とかに立ってるタイプ)ため、 頭上の標識やら木の枝などに注意しなければならないのが面倒。

この気の使い方が後々響いてこなければいいんだけど。

近所の幼稚園の子供たちが「がんばってー」と応援してくれるのに手をふりつつ、 どんどん進む。

ちょろちょろ走って追い抜いていくのは小学生。

おまえら絶対最後まで保たない。





3kmくらい歩くと、最初の関所、「王喜の関」に到着。

なんか小学生達が太鼓叩いて出迎えてくれてるし、 河川敷で凧揚げ大会とか開かれてるし。

結構盛り上がってるイベントなんだねこれ。

配られてるアメ玉を口に放り込みつつ、ここは休まないで素通り。

日が照ってきた。暑くなりそう。






更に2kmほど歩くと、川沿いから離れて小学校に入る。

「小月・西の台の関」に到着。

……なんか校庭がお祭りムード。露店とか出まくってるし。

ここで15分ほど小休憩。混雑しまくってるトイレにも行っておいた。



再スタート。今度は住宅地の中を進む。

ここで疑問が。

「海峡ウォーク」なのに、 さっきから全っ然海峡歩いてない。

何なんだ一体?海見たいよー。

隣を歩いている新人教育担当の先輩Iさんに聞いてみると、 後半の方で嫌と言うほど海沿いを歩くらしい。

地元の参加者は海なんて見慣れてて景色が変わらないから むしろそっちの方が嫌なんだとか。

私は海無し県野郎なんで、海はいくら見てても飽きなさそうなんだけど、 そういうもんなのか?



さらにこの辺で最大の問題が。

疲れた。足痛い。

……いや、こーゆうの不得意なんだから仕方ないじゃん。

まだ3分の1もきていない。

これ真面目に最後まで行けないかも。







2.5kmくらい歩くと、「清末・清末藩の関」(ここも小学校)に到着。11時。

配られていた麦茶をコップ3杯ほど流し込む。

……生き返るねこれ。

ここもやっぱりお祭りムード。

そろそろカロリー的に限界のため露店でたこ焼きを買う。 (会社から1000円分の食事券をもらっているので、これを使う)、

日差しが強い。

ご存知の方も多いと思うが、私は 「肌の弱さ世界最強(ドン!!)」なので 日焼けが心配。

そこで女性の同期、Uさんに日焼け止めクリームを貸してもらう。

彼女曰く、「絶対日焼けしないクリーム」らしい。

ありがとうUさん。感謝感謝。





さて出発。道はまたまた田舎道。田んぼとか広がってるし。

(ちなみにまだ全然海峡を見ていない)

ここまで旗は同期で順番に持っていて、今は私が持っている状態。

さすがに旗に負担を感じるようになってきた。

それでもがんばってえっちらおっちらやっていると、 側を歩いていた参加者のおばさんが話しかけてきた。


おばさん「旗重いでしょ?大変ねー。」


……学生時代なら適当に流していたが、 今は新人だが会社の旗を持った社会人。

ここは無愛想にできない。

bane「(なるべく爽やかに)いえ。 会社のためですから。大変じゃあありません(ニコッ)」


……。


「おおー。」「パチパチパチ…。」

近くを歩いていた別のおばさんグループから歓声が上がる。

わりと効果あったのか?

bane「ありがとうございます。○○(会社名)です。 よろしくお願いします。」

すかさず社名を言ってアピール。

「ああ、あそこね。」「知ってるわよ。」



なるほど。これが営業活動ってやつか。(←勘違い)





11時40分。昼食ポイントの「王司・神田の関」に到着。

またまたお祭りムードの小学校校庭で、焼きそばとうどん (両方麺だけど)をたいらげる。

……まだ半分に来ていない。これは本当に無理かも。

冷たいお茶を飲みながら座ってクダを巻いていると、 近くのジャングルジムに参加者の小さい子供達が群がっているのが 目に入る。

こいつらなんでこんなに元気なんだ?





12時30分くらいに再スタート。ここからは大きな国道沿いを歩く。

……2万人が列を作って国道沿いをねり歩くなんて光景、 このイベントを知らずに国道をドライブしてる人が見たら異様に映るだろう。

それにしても足がやばい。疲れたというより痛い。

一歩踏み出すたびにジンジンと筋肉痛のような痛みが足の裏に奔る。

やっぱり靴、コン○ースじゃ無理だったか。

↑当たり前。





ここが非常に長かった。休憩無しで8km。

「長府・城下の関」に到着。やっと半分を過ぎたあたりか。

この近くに会社の寮(私の住んでる所)があり、 旗はここに置いていくということになっている。

ここから旗無しは正直ありがたい。

同期何人かをトイレ休憩のため私の部屋に入れる。

……ここでこのまま終了できたらどんなにいいか。





道は一旦国道から外れ、商店街を抜けて神社とかが並ぶ通りへ。

この辺は城下町だったらしく、すごい歴史が感じられる。



※写真は別の日に撮影(ここから全部ね)



住んでるすぐそばにこんな場所があるなんてすごいよ実際。

石畳の通りを抜け、また国道に戻る。すると……











海が見えたー!!

いやー長かった。

「海峡ウォーク」って名前のイベントなのに20km歩いてやっと 海沿いの道か。

それにしてもすごい。

すぐそこに九州が見える。関門橋が見える。

波の音と潮風。最高だねこれは。

まったく地元の人はこの光景を「見飽きた」なんて言うんだから 贅沢だよ。



それはそうと。

足の痛みが限界にきている。一歩一歩が本当に辛い。

この痛みがなければ最高なんだけどねぇ。





海沿いの道を結構シャレにならない距離(6.5km)歩くと、 「みもすそ川・お茶処」という休憩所に到着。

ここが世に言う壇ノ浦。平家が滅んだ場所。

歴史にはあんまり興味ないけど、実際に自分がその場所に いると、なんだか不思議な気分になる。


源義経像と平知盛像





また、ここは長州藩の長州砲(名前がかっこいい)も展示されている。









関門橋をくぐり、2kmほど歩くと「唐戸・亀山本陣・赤間の関」に到着。

小まめに関所を設けてくれると休めるからうれしい。

会社の食事券を使い切るために、売っていた揚げ芋を購入。

やっぱり油もの最高だね。


赤間神宮と唐戸市場



亀山八幡宮で参加者は太鼓を鳴らしてお参りしてから 通過することになっているらしく、私もやってきた。

なんか太鼓鳴らす意味が分からなかったけど、 とりあえず強めに一発叩いてきた。


亀山八幡宮(階段がキツかった)







海沿いの国道から外れ、街中の道に入る。

ゴールはもう少し。よくここまで来たものだ。

この辺はさすが下関市の中心部。結構都会。

最後の関所、「晋作通り・日和山の関」で鳥の手羽先を食べ、 ラストスパート。

……といっても痛くて全くスピード出ないけど。

旗を置いた後は先輩のIさんと歩いてるんだけど、 この人が結構スタスタ歩くのでそのペースについていくのがやっと。

……逆にIさんのペースメイクが無いとどこかで立ち止まっていたかもだけど。




4時30分。下関駅前「シーモール・夜明けの陣」。

ついにゴール!!!

いやー長かったよ本当。よくやった自分。

ゴール地点では係の人達に拍手で迎えられ、完歩バッチと賞状、 お疲れ様のアイス・シューが配られる。

感動とかあるかと思ったけど、痛さでそれどころじゃないのが実際だ。

同期のみんなも一人もリタイヤせずゴール。(っていうか大部分が先に着いてた)

男は分かるけど女性陣まで残らず歩ききってるからすげーなみんな。

それと、最後一緒に歩いてた同期に、「歩いてる最中疲れたとか弱音言い過ぎ」 って言われた。

……まあ足の痛みを紛らわすためにずっと何か喋ってた記憶はあるけど、 これはあくまで痛みを誤魔化すためであって、本当に弱音を吐いていたわけじゃないぞ。 (←嘘つき)




終わった後同期のみんなで飲みに行った。

よし。ここは消費したカロリーを回復させるために飲み食いしまくるしかない!! と意気込んでたのに、みんな「明日からまた仕事だから」って言って抑え気味。

……仕方ない私も抑えるか。(おまえも明日仕事だろ)

なんか不完全燃焼。




次の日はみんな筋肉痛やらなんやらで足を引きずってた。

でも二日目からはみんな正常に戻ってた。




私だけ一週間足を引きずってたのは内緒だ。