品種名










「ガンダー」



「アプリコットビューティー」



「ページポルカ」



「ネグリタ」



「クリスマスマーベル」







これらの言葉を聞いて、ピンとくる人もいるのではないか?

そう。

これらは全て、チューリップの品種名である。







チューリップは近年様々な品種が作成されており、

それらは早生種、中生種、晩生種など様々な園芸品種に分類される。



最近チューリップ園に行く機会があり、そこで様々なチューリップを見てきた。

チューリップの前には品種名が分かるように、最初に書いたような品種名が書かれた 札が立ててあるのだが……。

中には、変わった品種名がついているチューリップも見受けられた。



チューリップの品種というものは、色や形、病気に強いかどうかなどを考慮して、 専門の研究者や教授なんかが配合して生成するものであろう。

当然、品種名を考えるのはそれを配合した人達であろう。



今回はチューリップ園で見つけた変わった品種名を、その品種名が付けられた 過程を想像しながら紹介したいと思う。




当然のことながら、品種名以外の登場人物やエピソードはフィクションなのであしからず。















その1






研究員「教授。チューリップの配合をさぼって、 なにジブリの映画なんか見てるんですか!?」

教授「すまんすまん。つい夢中になってしまった。 しかし研究員君よ、この映画、合点のいかないことが多くないか?」

研究員「何がです?」

教授「この映画に出てくる悪役の男、 家柄や勤め先は申し分のないほど優秀で、頭も良く、顔もハンサムな方じゃないか?」

研究員「そう言われてみればそうですが……。」

教授「少々野心家な所はあるようだが、男なら野心の一つも必要であろう?」

研究員「確かにそうですね。」

教授「なのになぜ!?ヒロインの女は結婚の相手としては申し分のない 悪役の男からの縁談を蹴って、あんな小汚い少年を選んだんだ?」

研究員「それは……そういうお話なので何故かは分かりませんが。」

教授「悪役の男を思うと不憫でならない。 人が当然持つ野望をかなえるため、何年も努力して今の地位を築いて、 ようやく夢が叶うといった所で。 縁者になる血筋と運命を持つヒロインの女と、どこから降って沸いたか分からない 薄汚い少年にいきなり『バルス』とか叫ばれて、自らの居城を粉砕された揚句、 『目がぁ〜』とかのたうち回る醜態を晒されて死んでいくのは、納得がいくものではないであろう?」

研究員「…………。」

教授「そこでだ。」

研究員「はい。」

教授「今度の新作チューリップの品種名は、 この悪役の男の死を悼んだ名をつけようと思う。」

研究員「ええっ!?」

教授「彼の死を人々が忘れないようにするためだ。」

研究員「いやそれはやめた方が……。」

教授「聞く耳は持たん。もう決めた。」













ムスカデット



























その2






研究員「このチューリップの品種名、なんでこんな名前付けたんですか?」

教授「近年の世界的大スターを模したのだ。」

研究員「……やはりそうでしたか。」

教授「今後、彼よりも世界中で愛されるスターは現れないだろう。 それほどまでに、彼の歌は、踊りは、人々を魅了した。」

研究員「おっしゃる通りです。」

教授「彼は死んでしまったが、彼の魂は永遠に人々の中に残り続けるであろう。 このチューリップも、彼のようにいつまでも人々の心に残る美しさであって欲しい、 そう思って彼を模す名前を付けたのだ。」













ムーンウォーカー



























その3






研究員「そのチューリップ、変わった咲き方ですね。 どことなくバラを思わせるような……。何という品種です?」

教授「これはバラだ。」

研究員「……え?」

教授「バラだ。」

研究員「いやいやさすがにそれはないでしょう。 確かにバラを思わせるような形ですが、ガクの配置、葉形状から、 チューリップなのは歴然です。」

教授「もちろんこれはチューリップだ。チューリップのバラだ。」

研究員「……えっと。冗談は辞めてくださいよ。チューリップは ユリ科ですよ?植物学上バラ科との違いは歴然ですし、逆にユリ科とバラ科両方の特徴を 持つチューリップなんてものがあったら、大発見ですよ?」

教授「だからこれはチューリップのバラだと言っているだろう?」

研究員「教授がおかしくなったー!!」













バラーダ



























その4

研究員「そういえば、教授の奥さんって何をされているんです?」

教授「そういえばまだ話してなかったかな? 妻もチューリップ配合の研究家だった。」

研究員「………研究家『だった』?」

教授「5年前に他界してな。事故だった。」

研究員「……すみません。」

教授「気にしなくていいぞ。それよりこれを見ろ。 ようやく配合に成功したようだ。」

研究員「きれいな色になりましたね。」

教授「実はこの色、妻が生前にどうしても作りたがっていた色なんだ。」

研究員「そうでしたか。……余計なことを言うようですが、 奥さんもきっと喜んでいると思いますよ?」

教授「そう言ってもらえるとうれしいよ。ありがとう。 さて、このチューリップの品種名を決めないとな……。」













ヨーコズドリーム



























何度も言うけど、フィクションなのであしからずー。