謎のボールペンおじさん








baneが下宿している場所の近辺では、 ボールペンおじさんなるものが出没します。







私が最初に出会ったのは下宿して半年ほど経ったころでした。










普通に道を歩いていると、自転車に乗ったおじさんに突然呼び止められました。


おじさん「すいません。 ……いやいや怪しい者じゃないんですけど。」








……えー。

この時点で十分怪しいです。



まあでも。


単に道を聞きたくて呼び止めたとか思うじゃないですか。

もしそうなら無視するのは可哀想です。



bane「どうかしましたか?」



……私は普通に受け答えをしました。


しかし。


次におじさんは訳の分からない事を言い出すのです。













おじさん「実は私、東京の会社の者でして。 今から築地に至急電話をかけなければいけないんですよ。」












はい?


いったいいきなり何の話を始めたんですか?




電話なんて勝手にかければいいじゃないですか。












というかですね。


ここは関東の僻地(失言)ですよ。

時間帯は平日の昼間。



なにゆえ東京の会社に勤ている人間が、こんなところでこんな時間に自転車を こいでいるんですか?

しかも服装おもいっきり普段着用のジャージじゃないですか。





全く矛盾だらけです。












……しかし。


そんな私の思考を無視して、おじさんは更に意味不明なことを口走ります。
















おじさん「なので二百円ほど電話代をいただけ ませんか?このボールペンを差し上げますから。」


















……えー。

さすがにここまで行くと返す言葉が見つかりません。





差し出されたのは明らかに使い古しの、汚いボールペンです。



こんなもの今日び誰も欲しがりません。


もちろん二百円の価値なんてあるわけないです。





なんで行き摺りの相手に、ただ同然でお金をあげなければならないのですか?



というか、硬貨が必要ということは公衆電話を使用するということですよね?


この時代に携帯電話を持っていない会社員なんていないと思いますよ。





もう嘘がバレバレです。


……でも逆に、ここまでバレバレだとなんかほのぼのします。




おじさん。

きっとタバコかなんか買おうとして小銭が足りなかったんだね。

それでなんとかして資金を調達しようとして、とっさに考えたそんな嘘で なんとかしようと思ったんだね……。

よし分かった。

ここで会ったのもなにかの縁。

そのボールペンを思い出代わりに、この百円玉二枚で好きなタバコでも買って くれよ。










………。









ってなるかぁボケー!!(怒)





こちとら金の無い大学生じゃいワレ!!

毎日のちょっとした出費を泣く泣く削って欲しい物買ったり遊びに行ったり してるんじゃぁ!!

それを何!?

嘘をついて!?

それもそんな小学生でも信じないような説得力のない嘘で!?

なんとかして銭毟り取ろうとしてんじゃねーぞ!!

どーせ若い頃パチンコとかにハマって後先考えず浪費して、仕事辞めてから 苦しくなってタバコも好きに買えなくなってるなんてオチじゃねーの!?

そういうのをなぁ、自業自得って言うんだよ自業自得!!

そんな奴にやるわけねーだろ大事な金を!!











……という訳で。

私は素直に「無理です。」と言ってその場を離れました。

おじさんは特に追い掛けてくるとかもせず、反対方向に自転車で 行ってしまいました。









……と。

普通はここで話が終わるはずなんですけどねぇ……。


そのおじさん、その後も姿を現すんです。








次に会ったのはその約一年後くらいでしょうか。

場所もその近辺です。

全く同じ話かけ方、同じ話題展開で二百円をもらおうとしてきます。



前にも私に話しかけたのを覚えていないのでしょうか?

少し寂しいです。






なんて思うわけねー!!

てめー二度目でしかも話同じってことは今までも しょっちゅうその辺の通行人呼び止めて金セビってただろコラァ!!


……ということでもちろんそのときも断りました。






そしてつい先日。

学校へ行こうと自転車をこいでいると、前方の 歩道端にあるタバコの自販機の前に、 例のおじさんがいるのを発見しました。

どうやらタバコを買おうとしているらしく、財布を覗き込んでお金を取り出そうと しています。

おじさん。

どうやら今回はお金せびらなくても大丈夫みたいだね。



……しかし。

おじさんは財布からお金を取り出さず、辺をキョロキョロと見回します。


そして。

自転車の私と目を合わせました。







おじさん「すいません。 ……いやいや怪しい者じゃないんですけど……。」








……。






おいてめー!!

今完全にタバコ買おうとして財布の金が足りないの確認してから 俺に声かけただろ!?

やっぱりタバコ代のための小銭稼ぎかいっ!!





そんな訳で。

もう付き合ってられません。

私はおじさんと目を合わせつつも、そのまま無視して素通りしました。





おじさん「おいっ!!おいっ!!話かけてるんだぞ こっちは!!」





……あ、怒った。

さすがに目を合わせておいての無視は気にさわったのでしょうか?



しかしこちらは自転車です。

おじさんがいくら怒っても距離はどんどん離れていきます。

結局。

さらに何やらワメき続けるおじさんを背に、私はそのまま去ってしまいました。














その日。

私が学校で同じくこの辺に下宿している友人にこの話をすると、


友人A「ああ、そのおじさんなら 俺も二回ほど声かけられたことあるよ。」

友人B「俺も何回かあるよ。」




……オイ。




あんたぁやっぱり日頃から見境無く通行人に 金せびってたんかい!!







ということで。

この大学キャンパス付近に住んでいる方。

ボールペンおじさんに出会ったら 優しい目で無視をしてあげましょう!!











追記:なんか話長くなってしまってすまぬーm(__)m