元祖ちくわボーイ




ちくわ天。



それは男のロマン。




青のりをまぶして揚げられたそれは、外はサックリ、中はモッチリの食感を維持 しつつ、咀嚼を重ねるごとに口の中に柔らかな旨みを広げる。



最初に出会ったのは小学校給食。



当時の私はそれに魅了され、余ったちくわ争奪じゃんけんに参加し、 じゃんけんぽんの掛け声に力を入れすぎて唇を切ったことすらあった(実話)。



……そんな僕たちが若かりし頃のカリスマだったちくわ天。



なんと大学の学食で50円という安価で売られている ではないかー!!









……というわけで、私は学食を利用する度にこのちくわの天ぷらを食している。




このちくわ天、20センチのサイズで二本50円ということで、金はないが沢山 食べたい大学生にとってウケがよかったらしく、学食の人気メニューと なっている。






しかし。


私をその辺のちくわファンと一緒にしてもらっては困る。




bane「すいませーん。ちくわ天うどんにトッピングで ちくわ4本ください。」


学食のおばちゃん「ええっ!? そうすると合計6本うどんに乗せることになってしまいますよ?」


bane「はい!!それでいいです!!」


学食のおばちゃん「……好きですねぇ(苦笑)」






と、いう具合に毎回4本以上は頼んでいるのだ。


じゃんけんで勝利しなければ沢山食べれなかった小学生時代のリバウンド、である。


ちなみにちくわ6本乗せうどんは山盛りのちくわでうどんが見えなくなり、 友人に言わせると「ちくわ乗せうどんって言うよりうどん入りちくわだな」らしい。









……そんな天国の様なちくわライフ(大げさ)を送っていたある日のこと。

私はある驚愕の事実を知ることとなる!!(やっぱり大げさです)









その日私はいつもの様に、学食でちくわを注文していた。

bane「すいませーん!ラーメンにトッピングで ちくわ四本乗せてくださーい!!」


学食のおばちゃん「はい。少々お持ちくださいね。」

おばちゃん達とは顔見知りになっていて、もはやイチイチ突っ込まれることはない。




しかし。

その日のおばちゃんは予想外の行動をとる。







学食のおばちゃん「(カウンターの奥に向かって) ほらっ!!例の子が来たわよっ!!」


おばちゃんの呼び掛けでカウンター奥の厨房から、三人ほどの おばちゃん達(調理担当だろうか?)が出てくる。


おばちゃんA「へぇーこの子がぁー。」

おばちゃんB「結構普通の子よねぇ。」

おばちゃんC「いやーでも元祖って顔してるわぁー。」








……いやあの。

何ですかこれは?

……つーか元祖って一体……?




完全に硬直する私を見て、最初に三人を呼んだおばちゃんが事態を説明する。


おばちゃん「ほらあなた毎日ちくわばっかし 食べてるじゃないですか。私たちの間では元祖ちくわボーイって呼ばれてて 結構有名になってるんですよ♪」







……。


なにぃぃぃーー!!



さすがにこれには驚いた。

確かに私は毎日毎日毎日毎日ちくわばっかし食べていたが、

まさかそんなしょーもないあだ名を つけられていたとは!!



うひー。マジでやだよー(涙)。

飲食店やコンビニでは、そこで働くバイト達がよく来る客に色々あだ名をつける、 とは聞いていたが、自分がそんなあだ名をつけられているとは夢にも思わなかった。





くっ。恐ろしい世の中だ。こんなんではオチオチ同じ注文なんてできねぇ。

つーか、最近近所のコンビニのシュークリームにもハマっていて 毎日買ってしまっているが、まさかそこでも「シュークリーム男」とか あだ名つけられていないだろうな……?








……そんな思考を巡らせつつ、いまだ硬直を続ける私におばちゃんはさらに 言葉を重ねる。




おばちゃん「そうそう何故元祖ってつけてるかって 言うとね、あなたの他にもう一人ちくわばっかり頼む人がいるんですよ。 そっちの人はまだ最近ですから、ニューちくわボーイって呼んでます♪」







……。


なにぃぃぃーー!!(パターン二回目)




私の他にこんなバカなあだ名つけられた奴がいる!?


……なんて言うか、ちょっとライバル心が……(オイ)。




まあでも予期せぬ同業者(?)の出現である。

これはどんな奴か見てみたい気もしないでもない。



私はここでやっと硬直を解き、おばちゃんに尋ねた。

bane「……そ、そうなんですか。……じゃあもしかしてその ニューって奴は今どこかに座ってるんですかねぇ?」

よく学食を利用するなら、ちょうど昼時の今どこかの席に座っている公算が高い。

それに対しておばちゃんは近くの席を指さし、

おばちゃん「ついさっきまでそこの席にいたんですけど ねぇ。もう食器片づけて行っちゃったみたいですよ。」

bane「そうですか……。」





チッ。

せっかく顔でも拝んでやろうとしたのにニアミスかいっ。


しかし分からないとなると結構気になるものである。

bane「じゃあこれからは、もしそいつが いたら教えてください。」

おばちゃん「分かりました♪」

ちくわの4本乗ったラーメンを差し出しながら、おばちゃんはなんか楽しそうに 答えた。














それから何日か後。

いつもの様にちくわを注文する私におばちゃんが言った。

おばちゃん「あ、ニューちくわボーイの子ついさっき 来ましたよ!」

……おおっ!!

bane「マジですか!?どこにいますかね?」

よし!これでやっと顔を拝めそうだ。



おばちゃん「ほら、あそこの角の席にいる子ですよ!!」


おばちゃんが指さす方を見ると、一人の男がちくわが山盛りになったドンブリを すすっている。


おおっ!!さすが私の名を継ぐ者っ!!


















……ってバンダナっ!!

注:麻雀激闘記参照。






オマエカヨッ!!